教育総論
卒前教育・病棟実習
消化器内科教育は、卒前教育、卒後研修から構成されています。卒前教育は、大きく分けて、医学部3年のチュートリアルと講義、4年次の診断学講義と実習、医学部5年次の病棟実習1週間、6年次の選択実習3週間で行われます。 3年次のチュートリアルと講義では、消化器に関連する基礎医学や臨床医学を総合的、かつ集中的に学習し、消化器各臓器の成り立ちやその機能、疾患の病理・病態や治療法について学習します。4年次には内科診断学の一環として、腹部診察についての講義と診断学実習があり、一般的な診断法を学習します。知識と問題解決能力を確認するコンピュータを用いた客観試験(CBT)と態度・臨床技能を客観的臨床能力試験(OSCE)に合格後、5年次の病棟実習へと進むことになります。
消化器内科で行われている5年次の病棟実習は、“見学”や“クルズス”を主体とした受け身の実習ではなく、学生一人一人が院内PHSを携帯し、自ら能動的、かつ効率的に実習を組み立てて、実際に学生カルテとして電子カルテに記載し、常に主治医の影となって(shadowing)医療に参加します。1週間の実習期間中に6-10名の患者さんを担当し、検査や治療にも診療チームの一員として参加します。また、この間シミュレーターを用いた内視鏡検査実習、外来実習なども体験します。こうした指導は、教授以下すべてのスタッフが担当し、熱心かつ丁寧な対応を常に心がけています。実習修了者を対象としたアンケート調査では、第一内科実習は最も有益であった実習の一つとして評価されています。6年次の選択実習においては、学生の希望をできる限り尊重して実習内容に反映させています。消化器内科に興味のある学生さんは、是非とも選択実習で消化器内科をお選びください。
卒後初期研修・後期研修
医師国家試験後に2年間行われる初期研修では、内科ローテーションの一環として4-8週の消化器内科研修が行われます。消化器内科の担当する疾患は緊急性の高い疾患から感染症、慢性炎症性疾患、悪性腫瘍、終末期医療まで幅広く、最善の医療を提供するためには、高度な消化器専門医療とともに、基本となる全身管理や関連する専門医との連携も不可欠です。実際、救急輪番の当番日には、消化管出血や急性腹症の患者が多く搬送され、救急医、放射線科医、外科医との円滑な連携のもと、救急診療が運営されており、こうした環境下で研修できることは大きなメリットといえます。初期研修では、消化器内科の肝臓、胆道・膵臓、消化管のグループに所属し、指導医とともに15-20名の患者を担当します。自由選択科目として消化器内科を選択することにより、消化器内科全般にわたる更なる研修も可能です。
卒後後期研修
特色
山梨大学医学部第一内科の診療は、肝臓、胆道・膵臓、消化管の各グループで行われており、それぞれ山梨県の中核病院としてだけでなく、全国的に見ても有数の診療、研究実績を有しています(診療内容参照)。後期研修では、各グループだけでなく、学外の基幹病院を含めてローテーションを行い、幅広い消化器内科の診療能力を養成します。内科専門医、消化器病学会専門医、肝臓病専門医、消化器内視鏡学会専門医などの専門医取得、博士学位取得など、様々な目的に対応した研修プログラムを編成しています。
研修プログラムの一例と到達目標
2年の初期研修後、3年目は大学で肝臓、胆膵、消化管の各グループをローテーション、4-5年目は関連病院で消化器内科一般の研修を行い、6年目から大学に戻り、自分の専門領域が決まれば該当するグループに所属し、より専門性の高い研修を行う。
消化器内科の診療技術のうち、腹部エコー、上部消化管内視鏡や消化管造影など基本的な手技は3年目に、4年目以後は治療内視鏡や経皮的処置などの治療手技についても比較的容易なものから指導医の指導下で開始する。6年目以後各専門医の受験資格を満たした段階で、希望に応じて専門医を取得する。学位取得の希望があれば大学院に入学し、社会人大学院生として研究を進めることも可能です。
充実した指導体制
消化器内科には、内科・消化器関連学会の専門医は29名、指導医は14名が所属し、指導にあたっており、内科専門医および消化器関連専門医資格の取得に必要な幅広い知識や経験の研修が可能です。
後期研修後と大学院進学
研修医の希望に応じて、専門医取得とともに大学院博士課程での研究などの学術的なキャリアを形成することも推奨しています。現在、抱える診療上の解決すべき課題について、次世代シークエンサーを用いた分子生物学的解析などから、より有用な診断法や治療法の開発に向けた最先端の研究に従事することも可能です。
新規治療法の開発・実践への取り組み
標準的な治療に関する知識や技術の研修も重要ですが、医療は日々進歩しており、患者様一人ひとりに最善の治療を提供するためには、常にグローバルな視点から新しい選択肢を確保してゆくことも大切です。こうした新しい知見や技術を導入するためには、チームとして知識や技術を絶えず更新してゆくことが必要です。消化器内科では、現在の診療の有効性・安全性を高める努力とともに、新しい治療の導入にも積極的に取り組んでいます。
研修に関するご相談
個別の研修希望にもできる範囲で対応したいと考えております。研修に関するご相談がありましたら遠慮なく山梨大学消化器内科までご連絡ください。
(2021年9月21日更新 文責: 高田ひとみ)